噴煙柱と噴火雲

火山噴火に伴って発生する現象として、噴煙柱・火山灰雲、溶岩流、岩屑なだれ、火砕流等があります(図1)。噴煙柱(eruption column)は爆発的噴火により火口直上に形成される柱状の噴煙と定義されます。噴煙柱内の気流は、静止液体中を上昇する乱流状態のプリュームとしてモデル化されます(Wilsson, 1976; Wilson et al., 1978, 1980; Sparks et al., 1896; Woods, 1988)。
図1に示したように、噴煙柱は噴煙の駆動力の違いにより、ガス推進域(gas thrust region)、対流域(convective region)、傘型域(umbrella region)の三つの領域に分けられます(例えば、Sparks, 1986)。ガス推進域では、火口から放出されたマグマに含まれるガスが急激に気化膨脹することにより生じる強い上昇流が駆動力となります。この駆動力は重力により急速に減速しますが、同時に、周囲から取り込まれた空気が加熱・膨脹され、浮力が発生します。この浮力が駆動力となって上昇流が維持されます。この領域は対流域と呼ばれます。上昇流は噴煙全体の密度と周囲の大気密度が等しくなり浮力を失うまで続き、その後、水平方向への広がりが支配的となり傘領域が形成されます。
噴煙柱および火山灰雲の高さは噴火のタイプによって決まります。噴煙高度と質量噴出率には密接な関係があり(例えば、Wilson et al., 1987;, Sparks, 1986; Woods, 1988)、その関係はエントレインント係数(風による空気と噴煙粒子の混合効率)により支配されます。一方、マグマ物性(温度、揮発成分量)、大気構造、噴出速度の影響は少ないと考えられています(例えば、小屋口ほか、2011)。火山灰雲は水平方向に広がりを持った雲で、噴煙柱の傘領域が時間とともに風により移流・拡散していくときに形成されます。噴煙柱の構成物が火山岩塊(volcanic block)や火山礫(lapill)を含む火砕物であるのに対して、火山灰雲の主な構成物は火山ガス、火山灰粒子です。